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「スカラ座」(Scala)ータイ映画のはなし1ー

タイの映画やドラマというと、何を思いつきますか?

タイのBLドラマや映画はよく知られていますよね。BLドラマや映画に出た俳優さんたちは日本でもタイでもとても有名で、タイの街中にある看板やCMで見かけないことは無いくらいです。

とはいえ、タイの映画やドラマはもちろんBLだけではない!

タイの映画、ドラマを観るとその国の伝統、常識、ルールなどタイの国の常識や生活が見えてきます。

もし、興味を持ったら観てみてくださいね。タイという国を深く知れる…かもしれません。

今回はアナンタ・ティタナット監督の「スカラ座」(Scala)が、とても良い映画だったのでご紹介したいと思います。

目次

今回の一本

「スカラ座」(原題:Scala)は、BTSサイアム駅の近くにあった老舗の映画館「スカラ座」の解体を追ったドキュメンタリー映画です。(2022|65分)

バンコクで50年以上営業を続けた老舗の映画館・スカラ座が2021年に取り壊されますが、その解体していく過程を記録しています。

閉館していく劇場の様子を淡々と追っていきながら、監督自身が劇場で過ごした幼少期の記憶が語られます。監督は、父親がスカラ座で働いており、幼少期に自身も映画館で過ごしたことがあると語っています。

レトロな雰囲気の老舗映画館は、映画好きな人の間では人気だったようです。以前の活気ある映画館はどんな感じだったのだろう、と思いを馳せながら少しずつ消えていく映画館の風景が時代の移り変わりと共に見えてきます。

タイ社会の動向と共に一時代を築いた映画館の栄華と衰退を感じることができる一本です。

映画をよく知るために


スカラ座は、1969年12月31日にオープンした、アールデコ様式の室内装飾を備えた座席数800の映画館です。イタリアのミラノにあるスカラ座にちなんで付けられました。

โดย This Photo was taken by Supanut Arunoprayote.

土地の所有者はチュラロンコーン大学で、2020年6月末で借地権契約が切れることから、2020年11月1日より取り壊しが開始となり約51年の歴史に幕が閉じられました。

この場所には、ホテル、ショッピングモール、オフィスビルなどの多目的ビルが建設されると言われていますが、今のところ(2024年現在)、跡地はまだ更地のままの状態です。少しでも面影があれば良いな、と思い跡地に行ってみましたがもう跡形もなくなっていました。

今は、もう昔訪れたことのある方達のブログなどでしかその面影を見ることができません。残念。

そして、映画の中でもかつての映画館の姿を見ることはできません。ただただ、解体される建物を観ながら、きっとこんな柱だったに違いない、きっと明るいシャンデリアであったのだろうと、想像するしかできないのです。

映画の中では、外でデモをする声などが聞こえてきます。

解体が始まった2020年の時期的には世界的に新型コロナウイルスが流行り始めた時期であり、感染症拡大防止策は第1波の感染者と死者数の少なさにおいてアジア諸国のなかでも際立った成功例とされる一方、国内の経済的ダメージは大きく世帯の負債拡大や失業が社会問題化していました。

またタイ国内の政治面では、野党である新未来党*1に下された解党命令をきっかけに学生・若者中心の反政府運動が活発化していた頃でもあります。若者が多く集まるサイアム駅周辺でのデモは、大きかったと考えられます。

同劇場を運営するApexグループは、以前、他にも単館劇場を持っていました。

ですが、サイアム劇場は2010年に政治的クーデター*1によって火災が起き閉鎖、リド劇場は1993年の火事を経てシネコンへ転換し2018年に閉館(その後、複合アートスペースとして復活*2)しています。

こちらはリド劇場の跡にできたリド・コネクトの入り口。行ってみたのでご紹介。

toeやYoggy New Wavesのライヴも行われていました。確かに、タイの若者もYoggy New Wavesの音楽好きそうだなぁと思います。

LIDO CONNECT Facebookより

これらの劇場が建てられた年は、サイアム駅周辺の開発が次々に進められ、大変な人気があったそうです。惜しいけれど、時代の流れには逆らえなかったということなのでしょうね。

スカラ座を史跡として保存するよう要請が出されたそうですが、近代建築のため登録しないことが決定されたそうです。リド劇場のように建物の雰囲気を残しつつ生まれ変わらせるということが出来なかったのかなぁ、もったいない気がしてしまいます。

ちなみに、スカラ座で最初に上映された作品は、第二次世界大戦末期のバルジの戦いを描いた「バルジ大作戦(Battle of the Bulge)」で、最終上映は「ニューシネマパラダイス(Cinema Paradiso)」だったそうです。

最後の上映映画にニューシネマパラダイスを流すなんて、泣かせようとしてる!でも、素敵なチョイスだと思います。

ドキュメンタリー映画ということで、終始静かに淡々と進んでいきますが、見終わった後にジーンと心に残る映画でした。タイで働く人たちの働き方もよくわかるので、楽しいです。

日本とは工事現場の雰囲気が全く違います。でも、タイに住んでいると、あーそうそうこんな感じだよね、というタイあるあるな一面かと思いますよ。

*1:都市部の若者を中心に支持を集めていた新未来党(Future Forward Party)に解党判決が下されたことによる抗議デモが行われた。のちに民主派政党「前進党」となり2024年の選挙戦で下院選第一党となったが、王室への中傷を禁じた不敬罪の改正を選挙公約に掲げたのは憲法違反だとして解党を命じられた。

*2 : 2010年タイ反政府デモは、2010年3月12日から5月19日にかけてタイ王国の首都バンコクで展開された反政府デモ活動。2010年4月10日(土曜日)、タクシン元首相派の市民ら約10万人(警察推計)の抗議デモに対し、アピシット・ウェーチャチーワ首相の承認と指示のもとにタイ王国軍が発砲し、2000人以上の死傷者を出した。この日は「暗黒の土曜日」とも呼ばれている。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

*3:「LIDO CONNECT」として名前を変え、新たに若者向けのカルチャーが集まる場所としてリノベーションしたプロジェクト。2019年8月にオープン。コンサートやショーを行うホールもある。

作品情報

作品名「スカラ座」(原題:Scala)
監督名アナンタ・ティタナット
劇場公開日2022年
  
       
  
      
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